白いへび2007/04/01 07:50

 春になると、庭に色々なものが出てくる。
小さいカエルとか、トカゲなんかはあまり害がないし、見ていて可愛い。

 ちょっと気持ち悪いなと思うのは、鉢をどけると出てくるムカデとか、ゲジゲジみたいなやつ。
こいつらは、ちょっとあまり顔を見たくない輩である。

 ある朝いつものように草むしりなどの雑用をこなして水をまいていたところ、どこかで何かちょろっと動く気配がした。

 いやなものだったら、見たくないと思いつつ、何だろうという好奇心がまさって、水を止め、気配のした方に目をむけた。

 何か白いものが木の陰に見える。
なんだろうと、近づいてみて、わっと後ろに引いてしまった。

 なんとそこにいたのは、へび。
それも白いやつである。

 小さいのでちょっとほっとして、少し近づいて観察してみると、トカゲを長くしたような小さなへびで、真っ白な身体に黄色い目をしている。

 星の王子さまに出てきたような感じのへびだなぁ。
・・・と思ったら、いきなりこっちの手にかみついてきやがった。

 痛い・・・と思った途端、気を失ったようだ。
ふと気付き、辺りを見回すと、自宅の庭はどこへやら・・・。
どうやら自分は、自宅から遠くはなれた砂漠の中に一人で倒れているようなのだ。

 さっきのへびもどこかにいってしまったし、誰もいない砂漠に私ひとりきりである。

 あてもなく歩いていると、遠くにオアシスのようなところが見えてきた。
バラの花が沢山咲いている庭に入ってみると、井戸があり、そこの水を汲んで飲んだ。
あぁ、おいしい・・・。

 ふと、気配を感じて振り返ったら、キツネが一匹、じっとこちらを見ているではないか。
しかも、
「星の王子様をみかけた?」
と、こちらに人間の言葉で、当たり前のような顔をしながら、しかし少しだけ恥ずかしそうに話しかけてくる。

 そうか・・・星の王子様のいた砂漠に来てしまったのか。
それからじきに私はキツネと友達になって楽しい時間をすごしたのだけれど、さすがに自分の庭にそろそろ戻りたくなってきた。

「ちょっと痛いと感じて、一瞬、死んだようになるけれど、本当に死んだわけではないんだよ」
と、さっきの白いへびが人間の言葉で私に説明している。
「うん、分かった」

 さすがに、かまれることが分かっているのはちょっと怖い。
思わず目をつぶると、足にちょっとした痛みを感じて気を失った。

 ふと我にかえると、いつもの帽子をかぶり軍手をしながら、庭の鉢に水をまいている自分がいた。
シャワー状の水が太陽の光りにあたり、小さな虹を幾重にも作っている。

 木陰を見ると、何か白いものがさっと消えていくような姿が見えたような気がしたので、そちらに向かって、ちょっと手をかざして挨拶した。

 また来年の今日、会いたいよね!
今日じゃなくては、絶対に会えないと思うから・・・。
きっとだよ!