江戸の世界に遊ぶ2006/10/25 08:42

 先日図書館で借りたのは、畠中恵さんの「おまけのこ」という小説である。

 昨年の夏に出版されて、ようやく借りる事が出来た。
長崎屋という、江戸の日本橋にある大店の病弱な若だんな、一太郎が主人公なのだけれど、何と言っても、この小説の面白さは、沢山出てくる妖怪たちなのだ。

 そもそも「しゃばけ」という、このシリーズ最初の小説が、NHKFMのラジオドラマでやっていて偶然聞いたのが始まり。

 おどろおどろしい話かと思いきや、祖母が大物の妖怪である、この一太郎という若だんなのまわりには、いつも妖(あやかし)たちがいて、なんだかとても楽しそうなのである。

 物語は、この一太郎を主人公に、色々な事件が起こり、そこに妖怪たちがからみつつ、話が進んでいく。

 何作かの短編が一冊になっているのだが、一太郎の幼なじみの菓子職人、栄吉は、どんなにがんばって作っても、まずい菓子しか作れなかったり、一太郎の兄(にい)やとして回りにいる妖怪の佐助と仁吉など、個性的なお馴染みの人物が毎度毎度、期待通りの活躍をしてくれるのだ。一太郎の、ほのぼのとしたキャラクターもいい。

 江戸の生活もしのばれて、次が読みたくなる小説。
最近まで知らなかったのだが、今年の5月にこのシリーズの新作「うそうそ」が出版されたようなので(今度は長編らしい)、また気長に図書館でめぐり合える日を待つことにしよう。

 図書館で一緒に借りたもう1冊は、杉浦日向子のエッセイ「隠居の日向ぼっこ」と言う本。江戸の庶民の生活が、道具や品物を一つずつ取り上げながら、イラストと共に描かれている。奇しくも江戸つながりの2冊となった。

 友人が、知り合いに勧められて杉浦日向子の本を買いに行ったというので、急に読みたくなってしまって借りた本。

 私がそもそも杉浦さんを知ったのは、ガロに掲載されていたマンガ家として。
江戸の世界を描いたマンガだったが、絵のうまさと、江戸の情緒がなんともいい感じでマッチして、確か小遣いで、単行本も買ったような気がする。

 その後、NHKのコメディーお江戸でござるに、江戸の風物を検証する研究家として毎回出演しているのを見て、再度、杉浦さんの名前を認識して以来のご無沙汰となった。
文章を読むのは初めてだけれど、エッセイもなかなかピリリとうまい。

 46歳という若さで病気にて急逝されたのだが、おそらくは、彼女の一生の中で、マンガ家だけでは収まらなかったんだろうなぁと思う。
その辺の思い切りも清い感じ。

 こちらはもう新作を待つことは出来ないけれど、著書は沢山あるようなので、少しずつ借りて読んで行こうと思う。

 江戸の世界は、なんだか情緒があって、時間もゆっくり流れている感じがしていい。
杉浦さんのエッセイにあったのだが、今年のこの季節は、この一回限り…と思い、大事に毎日を生きていかないとならないよなぁ…。

 杉浦さんはきっと私たちなんかより、この一回こっきりの季節を大事に大事にされたんだろうと思うと、余計そう痛感した。