特等席2006/05/17 08:28

 知り合いが二名、遠路はるばる訪ねてきてくれたので、車で駅まで迎えに行った。

 車といっても、私のは、4ナンバー、軽自動車のパン。
運転手と助手席までは、人間の座る場所と言えるが、後部座席は狭くて、とても椅子にすわって足をちょこんとおろせるようなスペースはないと言っていい。

 前夜、それを心配した家族が、
「後部座席にクッションを一つ、のせておいたら?」
と、アドバイスしてくれた。

 そうしておけば、左右どちからにおいたクッションに背中をあずけて、もう片側に足を伸ばして長々と横すわりが出来るだろうとの配慮。

 車に乗る段になって、
「狭くてごめんね」と、その旨を伝えると、
「あらあら・・・」という感じで、助手席の椅子を倒して、1名が後部座席に、なんとか乗り込む。

 次なる目的地に向かっていると、
「なかなか気持ちいい」と、後部座席にいる人が喜んでいる。

 その人は背が低いので、枕を頭につけて横に寝転がっている模様。
昼食を食べた後なので、なんとなく眠くなり、横になれたのが、余計気持ちがよかったのかもしれない。

 ショッピングセンターで降り、ちょっとした買い物と一休みしてお茶を飲み、また次なる目的地に向かうため、車に乗り込む。

 すると、あれれ・・・?

 先ほどは助手席に当たり前のように乗っていた人が、今度は助手席の椅子を倒して苦労して身体を折り曲げながら後部座席に、嬉々として乗り込んでいるではないか。

 さっき後部座席にいた人は、
「あら、取られちゃった・・・」
と笑っている。

 そうして、次の目的地に着くまでの間、後部座席の住人は、気持ち良さそうに寝入っていた。

 最終的に、私の家に向かう時には、先ほど後部座席に乗っていた人が、
「今度は譲るよ」と言いながら、自分は助手席に乗りこむ。

 なんだか知らぬ間に、私の軽自動車の特等席は、運転席でも助手席でもない、狭い後部座席にクッションをひとつおいた、お昼寝スペースになっていたのであった。

 この話をクッションを置くのを提案してくれた家族に夜、話したら、意外な展開に、びっくり・・・というよりは、くすくす笑ってた。

 知人二人も、狭いながらも特等席のある車両を楽しんでくれたようで、何よりでした・・・。